環境省報道発表資料【平成24年8月28日第4次レッドリストの公表について(お知らせ)】
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15619
『絶滅危惧IA類(CR) → 絶滅(EX)
ニホンカワウソ(本州以南亜種)絶滅危惧IA類(CR) → 絶滅(EX)
ニホンカワウソ(北海道亜種)とニホンカワウソ(本州以南亜種)は、最後の生息記録が前者では1955年、後者では1979年であり、いずれも30年以上が経過している。安藤(2008)は、過去の調査記録や目撃情報等を整理し、北海道亜種は1950年代、本州以南亜種は1990年代に絶滅したと考察した。ニホンカワウソのような中型の哺乳類が、人目に付かないまま長期間生息し続けていることは考えにくく、これまでの生息確認調査等の結果から絶滅したものと判断した。
九州地方のツキノワグマ
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) → 削除
前回のリストで絶滅のおそれのある地域個体群(LP)に掲載していた「九州地方のツキノワグマ」は、最後の確実な捕獲記録が1957年であり、既に50年以上が経過している。また、1987年に大分県で捕獲された個体は、九州以外の他地域から持ち込まれた個体であることが判明している。これらを総合的に判断し、九州地方のツキノワグマはすでに絶滅していると考えられるため、今回のリストから削除した。
鳥類
ダイトウノスリ
絶滅危惧IA類(CR) → 絶滅(EX)
1970年代初めの観察記録以降の確認が無く、大阪市立大学が2001年から2011年にかけて実施したダイトウコノハズクとダイトウメジロの調査による長期滞在期間中にも本亜種と推定される個体は確認されていない。北大東島、南大東島のどちらも限られた森林しかない植生環境で、猛禽類が存在した場合には発見が容易であるにもかかわらず確認記録が無いことから、本亜種は絶滅したものと判断した。
トキ
野生絶滅(EW) → 野生絶滅(EW) (変更なし)
2008年より佐渡島での野生復帰を実施し、2012年の春に初めて野生下での繁殖に成功した。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストカテゴリーによれば、「上位のカテゴリーに相当する基準が5年以上にわたって満たされない場合(すなわち下位のカテゴリーの基準を5年以上維持されることとなった場合)には、下位のカテゴリーへと移してよい。」と明記されており、5年以上の状況の継続が必要である。この基準を参考とし、現時点では、絶滅危惧IA類(CR)の定量的要件D(成熟個体数が1〜50未満であると推定される個体群である場合)を5年満たしていないことから、前回と同じ野生絶滅(EW)とした。
なおIUCNによると、野生復帰個体を成熟個体としてカウントする条件は、「再導入した個体は生存できる子孫(viable offspring)を生産してはじめて成熟個体として数える。」と明記されており、「生存できる子孫」は分類群によっても考え方が異なると考えられるが、モンゴル等で実施されているモウコノウマの再導入の事例では、野外で生まれた個体が繁殖年齢(5歳)に達して初めて、成熟個体としてカウントされている。
昆虫類
ゲンゴロウ
準絶滅危惧(NT) → 絶滅危惧II類(VU)
戦後までは北海道から九州にかけてごく普通に見られたが、高度経済成長期以降、急激に減少した。現在でも減少に歯止めがかかっていない状況で、多くの生息地が消滅しつつある。生息地に適した環境の減少、外来生物による捕食が大きな原因になっているほか、飼育目的の乱獲も減少の一因となっている。現在、東北地方では比較的多くの生息地があるものの、関東以西の個体群は生息地の消失や個体群の分断化により危機的状況にあることから、本見直しでは絶滅危惧II類(VU)にランクを上げた。
貝類
ハマグリ
新規 絶滅危惧II類(VU)
かつては青森県の陸奥湾から九州地方にかけての内湾、河口域に広く分布していたが、1980年代以降の干潟の干拓や埋め立て、海岸の護岸工事等により生息環境が悪化したため日本各地で急減した。仙台湾や東京湾にも大きな個体群があったが、現在はほとんど見られなくなっており、各地の漁獲量は1970年代の5〜20%まで落ち込んでいることから、今回新たに絶滅危惧II類(VU)に選定した。
なお、食用に「ハマグリ」として国内で流通しているものの多くは、中国や韓国等から輸入される外来種の「シナハマグリ」や、国内にも自然分布する外洋性の「チョウセンハマグリ」である。
植物I
ウラジロコムラサキ
絶滅危惧IA類(CR) → 絶滅危惧IB類(EN)
小笠原諸島にのみ生育する日本固有種。台風等の自然災害等による生育環境の変化、外来種のノヤギ、クマネズミ等による食害等により減少し、前回見直しでは絶滅危惧IA類(CR)に選定されていたが、小笠原諸島でのノヤギ駆除の取組によって野生個体群が回復したことから、本見直しでは絶滅危惧IB類(EN)にランクを下げた。』